帝国日本における買売春の法的規制についての思想の形成過程をたどるために、イギリス帝国の廃娼運動と日本のそれとの関係に着目し、日英帝国関係史について調査を実施した。研究成果は、3件の学会発表を行い、そこで公表した。また、本研究課題に関わる共著を1冊刊行した。 初年度のイギリス・ロンドンでの史料調査によって、廃娼運動の日英帝国関係史に、アメリカを本拠地とするWorld's Woman's Christian Temperance Unionが重要な関わりを持っていたことが明らかになったため、平成26年度は、アメリカ議会図書館およびFrances Willard House Archives(アメリカ・エヴァンストン)における史料調査を実施した。これらの調査の成果は、平成26年12月のジェンダー史学会において「廃娼運動の日英米情報ネットワークの形成過程」と題する個人研究発表を行い、公表した。 イギリス帝国の廃娼運動と日本のそれとを結ぶ重要な役割を果たした救世軍については、ロンドンの大英図書館、LSE図書館、救世軍本部の史料館で得た史料をもとに、平成26年12月、イギリス女性史研究会で「イギリス救世軍機関紙にみる日本人女性の表象-1900年代日本の自由廃業運動との関わりに着目して」と題する研究発表を行った。 これらの研究発表の中で、イギリスの廃娼運動についての情報が、どのような経緯で日本に伝わり、イギリスと日本の廃娼運動の相違が、どのような形で現れていたのかを明らかにした。
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