研究課題/領域番号 |
25883009
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
大濱 慶子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (30708566)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 中国 / ジェンダー / 高等教育 / 女子大学 / 社会変動 / 国際情報交換 / 比較教育学 |
研究概要 |
本研究は改革開放後に急速な発展を遂げた中国の女性学・ジェンダー研究と高等教育の改革の関係について、1990年代の社会主義市場経済政策の実施と第四回世界女性会議の北京開催という経済・文化のグローバル化の流れ、新たな社会変動に着目して明らかにするとともに、女性学を支持する中国の女性知識人によって広がる公共圏のメカニズムを解明することをめざしている。 平成25年度は中華人民共和国の高等教育と高学歴女性に関する資料のリサーチ、統計資料の収集に取り組み、とりわけ今世紀に入って重層化しつつあるジェンダー格差問題を射程に入れ、社会主義体制移行期に徹底された「男女同校合班制」という中国の男女平等教育の実相がいかなるものであり、改革開放後にどのような変化が生じたのか、その検証に着手した。 1980年代半ば、男女共学体制を打ち破り、三十年の空白期を経て復活した女子高等教育機関について考察した。女子高等教育機関は現在、中国の大学多様化の無視できない構成要素であり、女性学・ジェンダー研究の発展を促す新勢力となっている。完全共学化から男女別学へという日本を含む諸外国とは異なった発展経路を歩む中国の女子高等教育機関再興の背景について、なぜ近代に女子大学が興隆した大都市ではなく改革開放後、地方都市において再現したのか、統計データや当時の史料にあたって初期の女子大学開校の経緯を読み解くとともに、1990年代に社会主義社会の土壌から生まれた中国固有の女子大学の生成プロセス、今世紀に入り複層化する女子学院の構造を歴史的段階を追って整理した。 これらの作業を踏まえ、3月に北京、南京、上海で現地調査を行い、さらに詳しく関係者から女子学院の発展状況、女性学・ジェンダー教育の取り組み、カリキュラム設置状況、大卒女性の就業状況、女性教員を取り巻く状況について聞き取り調査を実施し、テキストの収集や現地資料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、中国女子高等教育機関の現地調査を実施し、最新のデータ、多様な資料の渉猟、発掘に努め、複雑に入り組んだ女子学院の構造を整理し、特にその成り立ちについては新たな研究成果を提示することができたと考える。とりわけ近代女子教育の発祥地でありながら、改革開放後、女子大学再建に後れを取り、実態がよくつかめなかった上海の現状について今回調査することができ、他所とは異なる特性や新動向を見出すことができたことは大きな収穫であった。 なお改革開放後の中国高等教育とジェンダー動態史の分析についてはさらに時間をかけて多角的に行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に入手した統計資料に基づき、さらにデータの充実化を図り、引き続き中華人民共和国の高等教育とジェンダーの動態の分析を深め、中国の高学歴女性を取り巻く状況や改革開放後の変化を掘り下げて明らかにする。また3月に実施した現地聞き取り調査の内容と結果について、各大学の女性学・ジェンダー教育の取り組みや地域別の特色をまとめ、学会での報告を計画している。 これと並行して、平成26年度は中国の女性学の発展と密接に関係し、その普及に大きく貢献しながらこれまであまり取り上げられてこなかった研究型の女性団体及びネットワークの分析を試みる。1980年代以降の草創期、1995年の第四回世界女性会議とNGOフォーラム開催を経た二つの時期に分け、それぞれのムーブメントの特質や機能を論じる。手順としては、まず以前に入手した資料の整理に加え、さらに関連の原文資料、文献を広く収集し、これを踏まえ現地調査を行う。女性学を支持する女性知識人が主体となった公共空間形成のメカニズム、その社会的役割を探究する。さらに研究成果を総括し、学会、学術雑誌等で発表していく予定である。
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