1.平成26年度は、前年度に北京、南京、上海で実施した女子学院の関係者への聞き取り調査及び中国の高等教育とジェンダーの動態に関するデータを引き続き分析し、地域別、各大学の女性学・ジェンダー教育の実践をまとめ、学会、研究会等で発表を行った。 2.また本年度は、地方新設女子学院の女性学教育モデルを検証するため、前年度の調査対象校とは異なるタイプの湖南女子学院を訪問し、教職員、学生への聞き取りを行い、中国の大学の大衆化と女子高等教育機関再興の諸相の解明に取り組んだ。その結果、中国の都市・農村ジェンダー格差の拡大が指摘される中で、地方都市の女子学院に多くの農村女性が進学していること、農村女性のエンパワーメントに寄与していることなどが明らかになった。 3.中国の女性学の普及と密接に関連している草の根女性団体の進展について、特に女性知識人による研究型民間女性ネットワーク(NGO)を中心に考察し、そこに切り開かれる公共空間と日本のジェンダー研究を架橋することは可能かを探った。(1)中国女性学の先駆者への聞き取りのほか、中国の民間女性団体の草分け、陝西省女性理論婚姻家庭研究会(西安)において「女性学・ジェンダー研究と女性団体」に関する報告を行い、会員たちと幅広い意見交換を行った。(2)北京で中国の女性NGOの責任者、研究者7名と「中国の女性学・ジェンダー研究の発展と草の根の取り組み-女性知識人による公共圏の創出-」座談会を開催し、その内容をまとめた。これにより、公共圏の射程が日中間の枠組みをはるかに超え、東アジア、欧米諸国へ複層的に交差しながら広がっていることが明らかとなり、これを読み解く作業が次の課題となる。
|