本研究では、「朱子学」における初学教育書『小学』を江戸期の儒者がどのように用いようと試みたのか、その意識の解明を試みたものである。「朱子学」を奉じた儒者たちが、どのように『小学』を理解していたのかを中心に分析した。同じく「朱子学」を奉ずる者でも『小学』が占める位置は大きく異なる。『小学』を具体的な学習段階として理論化しようと試みた儒者もいた。江戸後期に各地に設置された藩校・私塾において、初学段階に修学のカリキュラムとして一般化してゆく以前には、「朱子学」を奉ずる儒者たちが、学習課程のなかに組み込む理論化に試行錯誤していた姿を明かにすることが出来た。
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