研究課題/領域番号 |
25884013
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研究機関 | 長野県短期大学 |
研究代表者 |
馬場 智一 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (10713357)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 無限判断 / ユダヤ哲学 / ゴルディーン / コーヘン / レヴィナス / カント / ヘーゲル / 新カント派 |
研究実績の概要 |
J. ゴルディーン(Gordin)の博士論文『無限判断の理論についての研究』の精読に注力した。抽象的な内容故に難解極まる本書が展開する「無限判断」の哲学史的な位置づけと、その哲学的論理をできるかぎり明確に抽出し、その成果を論文にまとめた。本研究全体の研究目的に、「ユダヤ哲学」と呼びうる潮流の哲学的根拠の同定を掲げたが、以上の作業により、「ユダヤ哲学」の基本的な論理である無限判断がもつ以下の特徴が明確になった。 あらゆる認識判断は主語や述語を前提としている。したがって、認識判断に先立って主語や述語が措定されていなければならない。しかしこの措定自体も、措定されるべきものとは異なるあらゆるものを措定の対象領域から排除することを前提にしている。あらゆる判断の根源には、同一的なものの成立の要件として他なるものの排除があることを、この前提を問いかけることで明るみにするのが無限判断の特徴である。 ヘーゲル大論理学が確立した同一的な論理の体系は、現代哲学では様々に批判されてきたが、ヘルマン・コーヘンに依拠しながら、ゴルディーンが展開した無限判断論は、20世紀のヘーゲル批判の新カント派的な先取りであり、またこれをユダヤ思想の伝統とも接続するものであることが明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『無限判断の理論への探求』を精読することで、ゴルディーンの展開する抽象的な議論の論理的骨格がかなり明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の成果をもとに、抽象的な無限判断の論理が、その後、エマニュエル・レヴィナスの思想においてどのような新たな展開を見せたのかを『全体性と無限』を中心に読み解いてゆく。
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