研究課題
前年度はゴルディーン(ゴルダン)がコーヘンの所論から展開した無限判断の論理の内実を明確化した。本年度は、この成果をもとに無限判断のその後の展開を追った。無限判断はコーヘンでは認識論の問題として考察されていたが、これがその後のユダヤ系哲学者、とりわけゴルディーンと親しかったレヴィナスでどのように変奏されているのかを、第一の主著『全体性と無限』のなかに探った。コーヘンの無限判断は、判断を成立させる根源を問う。同一的な主語や述語の定立を可能にする無際限の非同一的なものの存在がこの問いから浮かび上がる。有限な同一者の存立を可能にする無限(無際限)の他なるものを問うのが無限判断の本来的な機能であり、哲学の体系を他性に開かれたものにしている。『全体性と無限』で展開される生の現象学は享受、住居、エロス、多産性など生の具体相に迫るものである以上、認識論的な次元において展開された無限判断の論理は、現象学者レヴィナスには一見無縁にみえる。しかし、有限な同一者の生の諸相を分析するたびに析出されるのは、有限者の存立を可能にする無規定な他性の存在である。デカルトの発想を換骨奪胎した「無限の観念」の議論も、思想史上の源泉はキリスト教神学にあるにも関わらず、それが実行しているのはまさに無限判断的な根源への問いかけである。ゴルディーン(およびコーヘン)とレヴィナスの哲学には、閉じた体系に対する明示的な批判が共通しており、それを可能にする無限(判断)の論理は、それぞれ別々の次元で展開されている。20世紀西洋哲学は前世紀にヘーゲルが打ち立てた体系的哲学に対する異議申し立てを一つの基調としているが、その哲学的源流および基礎の一つは、無限判断の論理に求めることができる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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