無限判断は、哲学史上これまで十全に展開してこなかったが、ラトヴィア出身のユダヤ人哲学者、J.ゴルディーンは、ヘーゲル的な閉じられた体系とは異なる開かれた体系の基盤として、無限判断の論理をヘルマン・コーヘンの純粋認識の論理学から導きだした。この論理は中世のマイモニデスと現代のコーヘンを貫くユダヤ哲学の特徴とされる。ゴルディーンはこの論理に基づく哲学体系を構想したが実現には至らなかった。思想形成期にゴルディーンから影響を受けたレヴィナスは、「体系」という発想は拒みつつも、第一の主著『全体性と無限』によって、この論理を具体的な生の諸相の下で具現化し、国家に回収されない開かれた社会の存在論を描いた。
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