研究課題/領域番号 |
25884014
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井戸 美里 東京大学, 東洋文化研究所, 特任助教 (90704510)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 美術 / 絵画 / 屏風 / 東アジア / イメージ |
研究概要 |
申請者は日本中世の美術を中心に、そこに描かれた図像的な意味とともにそれらが享受された空間について、同時代の歴史、文学、芸能史などを視野に入れた横断的な研究を目指している。本研究では、なかでも屏風、障子、衝立、掛け幅など、西欧のタブローとは異なる形態を持つ、東アジアに特徴的な絵画作品が、どのような空間においてどのように享受されていたのか、さらにはどのような機能を担っていたのかを、実際の作品調査に加え、同時代の文献資料や絵画資料から考察を行っている。 平成25年度は、中国、朝鮮半島に起源を持ち日本で独自の展開を遂げた主題のうち、「耕織図」について、特に朝鮮半島で制作された屏風絵について研究を行った。ソウルの博物館や美術館(国立中央博物館、民俗博物館、古宮博物館)を中心に調査を行い、1月にはその成果をまとめて、東洋学研究情報センターシンポジウム「東アジア絵画史の可能性―朝鮮王朝の絵画を起点として」において、「「耕織図」の日本における展開と受容の場をめぐって」と題した報告を行った。また3月には、ソウルの古宮博物館に所蔵される日本から渡った屏風絵の調査も行った。 同時に、美術と儀礼の場に関する考察も行っている。大画面の物語絵画として貴重な現存作例である土佐光吉筆「曽我物語図屏風」の調査を行い、画面構成の特徴を整理しながら、このような物語絵画の鑑賞された場について現在研究を進めている。この点については平成26年度にまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
韓国の美術館・博物館と連絡を取りながら、研究に必要な作品についての調査依頼を行っているが、依頼する作品のうち保存状態などの観点から特別観覧ができないこともある。そのような困難はあるが、本年度は、韓国で出版されている「耕織図」に関わる論文や最新の研究を現地で集め、報告することができたことは一つの成果であり、研究自体はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては、引き続き、米国に所蔵される日本や朝鮮半島で制作された「耕織図」の調査を行う予定である。さらに本研究は、大画面の屏風絵の享受の場に焦点を置くが、特に、金屏風について掘り下げて考察する。金屏風については、先学による多くの研究があるのでそれらを参考にしながら、金屏風の特性について、金屏風の画題、贈答品としての金屏風、空間の室礼という三つの視点から再考していきたい。
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