本科研費助成の最終年度であるため、成果の取りまとめを中心に実施した。また研究活動スタート支援の主旨を踏まえ、今後の研究課題の洗い出しを実施した。 前年度に実施した沖縄県石垣島・安良村跡の発掘調査では、集落の展開を物語る遺構遺物を検出し、3次に渡る人間活動の痕跡を確認する大きな成果を挙げることができた。本年度は出土遺物の整理作業を実施し、鉄片の保存処理、貝類、イノシシ類を中心とする動物遺体の分析を各専門家に依頼した。また発掘区全体で検出された砂層およびその上層で確認された砂と粘土の互層は、文献記録に登場する18世紀の津波との関係が考えられた。そこで珪藻分析を依頼したが、何れの層からも検出されない結果となり、理化学分析から津波堆積層を絞り込むことは出来なかった。この結果をどのように理解し安良村の歴史を解釈していくかは今後の課題である。なおアウトリーチ活動として、2014年9月から法政大学沖縄文化研究所にて出土資料の展示を実施中である。 もう一つのテーマである豚飼育施設については、これまでに未着手だった沖縄本島(南城市、沖縄市、国頭村)、鳩間島、波照間島にて遺構調査を実施し、関係者から証言を得ることができた。特にハワイの移民経験者からの情報は貴重だったが、実物はもうハワイには残っていないとのことだった。前年度までの調査成果と合わせて、琉球諸島の豚飼育施設の分類と展開に関する学術論文を作成し発表した。また大韓民国済州島にて豚飼育施設の調査を実施した。そして琉球諸島、奄美諸島の例との比較研究を行い、その成果を学術論文に取りまとめ投稿した。これら3地域の豚飼育施設は形態に差が大きく、直接の関係性は無いと考えられたが、農業との連動など社会的位置づけに共通点が見られ、また1970年代を節目としてほぼ同時に消滅したことが確認された。この時期の琉韓における歴史的転換が背景にあると考えられよう。
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