新潟県南魚沼市六日町の今成家に残された湿板写真の分析を出発点としながら、幕末~明治中頃までの日本における写真受容の様相を研究した。平性26年度は、これまでの研究から日本における写真受容を考察する上で重要な手がかりであると考えられた (1)写真と歌舞伎を中心とする庶民文化の関係、(2)「声」「動き」と写真を結びつける定型的イメージ、に関する分析と考察を行った。 平成26年度前半は、歌舞伎を中心とした庶民文化と写真受容の関係を中心に研究を進めた。まず、写真と歌舞伎を中心とする庶民文化の一般的関係性について、様々な資料をもとに整理した。その後、芝居「白石噺」の敵討場面を再構成した今成家の写真と、同一場面を描き出した芝居絵を比較分析し、さらにその結果を、当時の一般的な写真受容の様相に関連付けて考察した。この研究の結果、写真と芝居絵の表象システムの差異を、具体的な作例に基づいて示すことができた。また、こうした写真と芝居絵の差異が、当時の人々には限定的にしか自覚されていなかった可能性が明らかとなった。 平成26年度後半は、今成家の事例から発見された「声」や「動き」と写真を結びつける定型的イメージについて研究を進めた。まずは「声」や「動き」と写真を結びつける定型的イメージを、写真のみならず様々な言語活動の中から収集した。次に、写真と蓄音機、活動写真などの後続メディアの関係について考察した。研究の結果、「声」や「動き」と写真を結びつける定型的イメージが、明治中期以降の後続メディアの導入に際して、後続メディアを写真との類推で理解してゆく背景となっていたことが明らかとなった。 平成26年10月には、資料が発見された六日町で広く一般に向けて研究成果を公開するため「今成家写真と南魚沼の文化」展、2014年10月19日-11月21日、南魚沼市図書館展示コーナー(新潟県・南魚沼市)を開催した。
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