研究課題/領域番号 |
25884037
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西本 希呼 京都大学, 白眉センター, 助教 (10712416)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | マダガスカル語(マラガシ語) / オーストロネシア諸語研究 / ポリネシア / 言語多様性 / 記述言語学 / 少数言語・危機言語 / 動詞形態・統語論 |
研究概要 |
本研究の目的は、応募者が従来取り組んできたマダガスカル語Tandroy方言とその周辺の諸方言の調査・分析をさらに進め、動詞カテゴリーを中心としたマダガスカル語に特徴的な文法事象の詳細および方言連鎖の様相を解明すること、そして、それらを通じて、マダガスカル語諸方言がいかなる歴史的経緯を経て現在のそれぞれの体系に至ったかを考察することである。 マダガスカル語Tandroy方言のReference grammarを執筆するために、何年もかかる長期戦であるが、現在地道に取組中である。その成果の一部を、東京農業大学、白眉センターといった異なる分野の前での学術発表、グラーツ大学(オーストリア)でポリネシア諸語のドキュメンテーションに関する発表を行った。マラガシ語タンルイ方言の敬語については、アテネ学術研究所(ギリシャ)、言語多様性という視点においては、ソウル大学で開催された日韓共催シンポジウムで発表した。 また、ナイジェリア南部のイロリンを短期客員研究員として訪問し、マダガスカル語を含むアフリカ言語・文化を専門とする研究者との意見交換を行った。 ルルツ島(仏領ポリネシア)では、農耕歴と月の満ち欠けに関する学術調査を行った。 本研究で得られた研究成果の一部を、慶応義塾大学、Kwara州立大学(ナイジェリア)で講演を行った。社会貢献活動の一環として、NPO法人地球ことばの村のホームページに、ルルツ語およびラパヌイ語(イースター島)の一般向け解説を掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに引き続き、マダガスカルを含むオーストロネシア諸語の研究に従事した。今年度は、2011年から研究を開始した仏領ポリネシアのタヒチ島、ルルツ島で学術調査を実施し、特にルルツ島では、植物語彙、月の満ち欠けに関係する語彙と現地の農耕歴に関連する語の採集を行った。そこで、ルルツ語話者の植物と人とのかかわりが明らかになり、今後の新たな展望が生まれた。ほか、譲渡可能・不可能の所有人称代名詞を用いる名詞、タヒチ語とルルツ語の音韻体系の分析と記述を行った。引き続き来年度も調査を継続する。 マダガスカルの政情不安が悪化し、予定していたマダガスカルでの現地調査を実施することができなかったことで、これまでの研究で得たデータの再確認や、動名詞の用法、マダガスカル語Tandroy方言を含むほかの諸方言のデータ収集を行うことができなかったことは遺憾である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、マダガスカルの政情が安定し次第、マダガスカルへの現地調査を予定している。また、仏領ポリネシア・ルルツ島の植物と月の満ち欠けに関するより詳細な言語データと、言語データに見られる植物と人とのかかわりの、自然科学的根拠を、植物学や分子生物学専門の研究者との学術交流を通じて、より掘り下げて取扱い。 併せて、ルルツ語やタヒチ語をはじめとした、マダガスカル語と同族の言語に視野を向けることで、オーストロネシア諸語の比較言語学研究への発展を目指す。なお、本研究で得られた調査・分析資料は電子媒体のデータベースとして構築・公開する。
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