研究課題/領域番号 |
25884040
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金城 未来 大阪大学, 文学研究科, 助教 (50709532)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 中国古代思想 / 新出土文献 / 清華大学蔵戦国竹簡 / 経書 / 『尚書』 / 『毛詩』 |
研究概要 |
本研究は、中国古代の新出土文献を研究対象とし、伝世文献と共に活用することにより、古代思想史の空白を埋め、その変遷を明確にすることを目指すものである。本年度は、特に楚地より出土した可能性が指摘されている「清華大学蔵戦国竹簡(清華簡)」に含まれる経書関連文献『傅説之命(説命)』と『周公之琴舞』とを研究対象として取り上げ、分析を試みた。その結果、以下の成果が得られた。 1、清華簡『説命』について 清華簡『説命』は、偽古文『尚書』説命と深く関連する文献である。しかし、両者を比較検討すれば、篇題、呼称表記、分篇個所、語句や引用故事など様々な相違点の存在に気付く。特に報告者は、清華簡『説命』の特徴として、偽古文『尚書』説命以上に、人格神的「天」の記述が散見することを指摘した。また、清華簡『説命』には、天が直接、臣下(傅説)に命を下しているかに見える記述が存在するが、ここには殷王武丁の存在も確認できる。そのため該所の内容は「天→王→臣下」という階層制度を保持した従来の天命の枠組みを超えるものではない可能性が高いことを述べた。 2、清華簡『周公之琴舞』について 清華簡『周公之琴舞』は、篇題や使用語句などが舞踊を連想させる特徴的なものであること、また本篇に見える「敬之」詩と今本『毛詩』敬之とを比較することにより、戦国中晩期には、語句に僅かに揺らぎが見られ、複数の詩(句)が綴合されているものの、『毛詩』敬之詩全体が、ほぼ現行本と近似したまとまりを持った形で存在していたことを明らかにした。 以上の検討を通して、資料的制約のため窺うことのできなかった楚地における経書受容の一端が明らかとなった。また清華簡を含め、新出土文献には古代聖賢の言行を記す文献が散見する。本研究の成果は、傍流視されてきた楚地の思想や文化を考究する上でも、中国古代の聖賢像を再検討する上でも、重要な足掛かりとなるものであると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、上博楚簡や清華簡に所収の新出土文献三篇を研究対象として検討を進め、国内外の学会で研究発表を行うことができた。またその成果は、「上博楚簡『成王既邦』の思想的特質――周公旦像を中心に」(『中国研究集刊』第57号、2013年12月)、および「清華簡『説命』の文献的特質――天の思想を中心に」(『待兼山論叢』第47号、2013年12月)として論文化し、学術誌に掲載された。平成26年度もすでにいくつかの学会への参加が確定しており、研究発表を行う準備がある。そのため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26 年度も、戦国竹簡の個別的整理・釈読作業を継続して行う。また、戦国楚簡に見える経書関連文献に加え、巫術的な内容や楚国の故事・歴史を記す文献など、楚特有の思想や文化についても検討したい。なお、研究対象である一次資料(竹簡)に記された文字は、秦の始皇帝が隸書に文字統一する以前のものであり、その読解には依然として釈読困難なものや字義に諸説あるものなど、曖昧な点が多く残されている。そのため、本研究を進める上で文字の釈読に問題がある場合には、現地へ赴き、竹簡の実見調査を行い、所蔵機関の研究員と直接議論し、戦国古文字の確定および字義の検討を厳密に行いたい。
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