研究課題/領域番号 |
25884041
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹村 明日香 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (10712747)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 日本語学 / 音韻 / 子音 / 口蓋化 / 硬口蓋化 / キリシタン資料 / 上代特殊仮名遣 |
研究概要 |
本研究の目的は、16-17世紀のローマ字本キリシタン資料から得られた硬口蓋化と子音の相関性に関する知見を以て、日本語史に残された音韻論・形態論的問題について新たな解釈を提示することである。特に(1)キリシタン資料の拗音節表記と上代特殊仮名遣のイ列・エ列おける表記の分布がほぼ一致することを、硬口蓋化が子音に及ぼす通言語・通時的特徴の観点から解明すること、(2)キリシタン資料の拗音節に認められた子音の偏在的分布が、日本語動詞の活用という形態論レベルでも関連しているか否かを明らかにすることである。 本年度は上記の目的を達成するための基礎的段階と位置づけ、資料の読解と用例収集・整理を中心に行った。 (1)に関しては、硬口蓋化の影響により、キリシタン資料の特定の子音で「e」と「i」で揺れている表記の音価を推定するため、当時のポルトガル語文献Grammatica Da Lingoagem Portuguesa(1536)やOrthographia da Lingoa Portuguesa(1576)等の読解を進めた。結果、「e」の表記には二つの異なる音素が充てられており、当時から表記法において議論があったことが判明した。他にも、世界の諸言語における硬口蓋化と子音との相関性について調査しそれらの通言語的特徴をまとめた。さらに上代特殊仮名遣については、有坂秀世、河野六郎などの先行研究を整理し、重紐との関連について再検討した。 また(2)に関しては上代~中世末までの動詞を収集し、活用する行を子音の調音点別に分類したデータベースを作成した。本年度は特に上代語を中心に行い、出現時期の偏在や各動詞の特色について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポルトガル語文献の読解に予定よりも時間がかかり、中古~中世の動詞の収集・整理に十分手が回らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
ポルトガル語文献に基づく音価推定をさらに進めると共に、これまでの調査では欠けていたアクセントの観点からの考察を行う。16世紀ポルトガル人の日本語の聞き取り(特に拗音節)において、高低アクセントが影響していたか否かを検証し、表記への反映具合を検討する。 また、前年度に調査が遅れがちであった上代特殊仮名遣と重紐の相関性を検討し直し、これらとの類似点がキリシタン資料にも確認できるかどうかの検討、及び、理論化を行う。 そして、中古~中世末の日本語動詞を収集し、活用する行における子音の偏在的分布をデータ化した上で、前年度の成果と合わせて通時的な変遷について考察する。 以上の研究成果をまとめ、学会発表と学術論文誌への投稿を行う。
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