本研究では、中国と日本の仏教説話を参照しながら、仏像の像内に印仏が納入された信仰的背景を考察した。特に地蔵菩薩彫像への印仏の納入に注目し、大量の地蔵菩薩画像の像内納入を記す早期の史料である北宋代の『地蔵菩薩応験記』の記載を検証した。同時に、その画像が日本では版画と認識された可能性を考察し、平安~鎌倉時代の印仏納入の思想的源泉を北宋代の信仰に求めた。さらに、彫像による千体地蔵の諸作例や経典の記載を視野におさめることで、印仏を納入した地蔵菩薩彫像は多数の分身を伴う姿を表した作例であるとの見通しを立てることができた。
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