本研究は、長崎県対馬市所在の中国・朝鮮半島伝来の経典を悉皆調査し、目録・データベースを作成する事を目的とするもので、26年度は、昨年度に引き続き調査対象となる経巻群の内、最大の量を数える豆酘・多久頭魂神社所蔵の高麗再雕版大蔵経1014巻について調査を行った。 調査は、本経巻寄託先である長崎県立対馬歴史民俗資料館において、平成26年7月21日~24日、平成26年12月15日~19日、平成27年3月5日~8日の合計13日に亘り行い、対馬歴史民俗資料館、本学大学院生の協力を得た。今回の調査では、従来の調査(長崎県文化財指定時調査)になかった詳細な書誌情報を記録すべく、各冊毎に書名、員数、欠損、表紙、表紙欠損、外題、覚外題、紙数、破損状況、刊記、特別版記、版記場所、刻工名、備考などを漏らさず調査した。特に刻工名については、既知の高野山本・増上寺本の報告書、また韓国で出版されている刻工名調査報告書を参照して省略無く記録した。 今年度の調査では、墨書「此経数見/住持」(452-1)、小口書「目録(花押)十一内」(557-1~560-3)など経巻作成や伝来にかかわる情報が得られた。これらの詳細書誌情報は、京都府立大学において入力・整理を行い、データベースとして完成した。このデータベースは、長崎県立対馬歴史民俗資料館・京都府立大学にて利用できるように構築した。調査者の了解を得て、特に注目すべき箇所の画像を撮影した。こちらについては所有者の許可があれば、京都府立大学にて利用できるように保管してある。 また最終の確認調査で、多久頭魂神社において対馬歴史民俗資料館に移管していない経典類を実見したところ、本大蔵経の類巻とおぼしい断簡類が発見された。大蔵経全体の保護・評価をするためには、今後継続的な調査が必要と思われる。
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