研究課題
2014年度は、4月から5月にかけての時期と8月にイスタンブルにて史料調査を行い、1850年代から1870年代にかけてのオスマン帝国において、非ムスリムの領分をめぐる枠組みがどのような展開を遂げたのかを論ずるための史料を収集した。主に首相府オスマン文書館とアタテュルク図書館で調査を行い、前者ではオスマン帝国の行政文書を、後者ではアルメニア語刊行物を閲覧した。特に、8月の調査時には、首相府オスマン文書館では外務省文書の、アタテュルク図書館ではアルメニア語単行書の公開が進んでおり、そのなかには研究テーマに関わる新たな史料も多数含まれていた。こうしたこれまで利用されてこなかった貴重な史料を閲覧することができた意義は大きいが、その公開は予想外のことであり、両者ともに分量が少なくないため、今後も継続して調査する必要が生じた。2014年度には、日本語と英語で一度ずつ、それぞれ4月と9月に研究発表を行った。また、11月には英文で国際的な学術雑誌に論文を投稿し、2015年3月には英文論文が一点、刊行された。これらの研究成果は、オスマン帝国が近代国家化するなかで、非ムスリムの領分をめぐる枠組みがどのように形成され、機能していったのか、つまり、近代国家としてのオスマン帝国が近世的な秩序をいかに継承していったのかを明らかにすることに資するものであり、従来「ミッレト制」という枠組みのもので誤った理解が流布してきたオスマン帝国の非ムスリム統治方式を見直すことにつながる意義を持っている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Hidemitsu Kuroki (ed.), Human Mobility and Multiethnic Coexistence in Middle Eastern Urban Societies 1: Tehran, Aleppo, Istanbul, and Beirut
巻: none ページ: 85-102
近代・イスラームの教育社会史:オスマン帝国からの展望
巻: none ページ: 138-164