オスマン帝国の非ムスリム統治をめぐる枠組みとしてかつて提唱されてきたミッレト制論を乗り越え、前近代においてムスリムの非ムスリムに対する優位のもとで後者がいかに共同体自治を享受してきたのかを正確に理解すべく、多くの研究がなされてきた。しかし、不平等のもとで存在したそうした共同体自治が、平等原則を採用した近代オスマン帝国にどのように受け継がれたのかについてはまだ解明されていなかった。本研究はこうした過程を、「特権」や「宗教」、「政治」といった概念が非ムスリム共同体自治の広がりと限界を論ずるための用語として用いられるにいたる過程として論じた。
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