研究課題/領域番号 |
25884057
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
吉永 匡史 工学院大学, 工学部, 研究員 (20705298)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 交通検察 / 日本古代史 / 唐代史 / 律令 |
研究概要 |
本研究費の交付決定が平成25年9月であったため、本年度の研究従事期間は実質的には7ヶ月ほどとなる。以下、中国唐代史と日本古代史に分けて研究実績を概略する。 まず中国唐代史については、関を通過するための通行証である過所を研究の中心に据えた。具体的には吐魯番文書にみえる過所、および過所判給手続きにかかわる文書に注目し、その過程を詳細に検討した。その結果、従来は過所申請手続きと直接関連づけられていなかった文書について、新たな位置づけを行うことが出来た。本成果は現在成稿中であり、平成26年度中に公表予定である。 次に日本古代史であるが、唐代史と同様に過所を検討の中心に据え、その具体像に迫った。国家的交通検察拠点の代表例である関については既に研究を深めていたため、今回は船津における検察について考察を進めた。その際には、検察の実行力をどのように配備したのかという点を重視し、法制・実態双方から具体像の復原につとめた。そして検察の厳格さの度合いによって通行証は多様なあり方を示すことを明らかにした上で、過所様木簡とされる木簡を個別に検証し、新たに位置づけ直すことができた。本成果は、平成26年5月10~11日に開催される交通史学会大会で報告する。 また、飯塚遺跡をはじめとした交通の要衝に位置する遺跡の実地調査を行ったほか、関市令にかかわる史料調査も実施した。これらの成果は、平成26年度中に随時公表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究期間は実質半年ほどであったため、当該年度中に成果を公表するには至らなかったが、翌年度における学会発表・論文公表が確定しており、おおむね順調に進展していると言える。研究時間の比率としては日本古代史に対する配分がやや多かったため、翌年度では適宜調整したい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、翌年度も研究を推進する。以下、中国唐代史と日本古代史に分けて述べる。 まず中国唐代史については、散逸した唐関市令の復原を行う。関市令は関と市にかんする条文から構成される。これまで関にかかわる条文の復原はほぼ終えているが、市については未着手である。唐関市令の総合的な理解を深めるため、唐令の復原研究を主軸に据える。またこれと併行して、『唐会要』をはじめとした復原根拠史料の史料学的研究も進めていきたい。 日本古代史については、唐令の復原研究をふまえて日唐令の比較検討を行うとともに、研究対象とする時期を引き下げて、平安時代以降における交通検察体制の変質についても考察する。あわせて、近世における関市令研究の推移についても、史学史的検討を加えていきたい。さらに情報の伝播という観点から、『日本国見在書目録』の検討を進め、書籍の伝来・受容についても研究を進める。 以上の研究を推進するにあたり、交通検察にかかわる遺跡の実地調査や、唐令復原根拠史料の史料調査を随時実施する予定である。
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