本研究は、物語中、後に起こる出来事を予示することによりサスペンスを生む「予告」、及び出来事が起こってから事後的に隠された意味が明らかになる「布石」という語りの手法に注目し、これらの機能を考察することを目的とした。研究期間内の成果として、19世紀の自然主義作家エミール・ゾラの作品を分析の中心にすえ、語りの手法がいかに変遷したか、草稿も用いながら読み解いた。また小説・戯曲などのジャンル比較を行った結果、これらの手法が各ジャンルに即した形で書き直され、それぞれ初読(初見)と再読(再見)に対応した機能を果たすよう使い分けられていることがわかった。
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