研究課題/領域番号 |
25884061
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
撫原 華子 東京女子大学, 人間科学研究科, 研究員 (80707943)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 女性表象 / 演劇 / イギリス |
研究概要 |
本年度は、18世紀~19世紀英国演劇における女性表象の変遷をたどることを目的とした研究の一環として、まず、18世紀の部分について考察した。具体的には、「ヘンリー五世像の変容と〈新しい女たち〉―1720年代シェイクスピア歴史劇の改作」と題し、第52回シェイクスピア学会(2013年10月、鹿児島大学)にて研究発表を行った。Theophilus Cibber (1703-58) の『ヘンリー六世』第2部・第3部改作(An Historical Tragedy of the Civil Wars between the Houses of York and Lancaster in the Reign of King Henry the VI)と、Aaron Hill (1685-1750) の『ヘンリー五世』改作(King Henry the Fifth; Or, The Conquest of France by the English)は、1723年の7月5日と12月5日に、ドルリー・レイン劇場にてそれぞれ初演されており、ヘンリー五世表象が作品中にて扱われている点が共通している。本発表では、これらの改作におけるヘンリー五世表象およびジェンダー表象についての考察を通じて、当時の英国社会情勢と改作との関わりを明らかにした。 さらに、女性表象研究の一環として、"The Emergence of a New Woman: The History of the Transformation of Gracia"と題した論文を『論集』(東京女子大学紀要)に発表した。この論文においては、明智光秀の娘で、キリスト教を信仰していたことで知られる、細川ガラシャ(1563-1600)の演劇作品における「女性表象」が、明治期からの100年間にいかに変容を遂げたかを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の当初研究目的に関して、2013年度に予定していた部分の研究については学会発表を行い、その過程に多くの先生方からいただいたフィードバックにより、内容的に大きく深めることができた。そのことを考えれば、おおむね順調に進展していると思われる。2013年度内に、その研究発表の内容に大幅に加筆・修正し、論文として投稿する準備を重ねたので、その成果を2014年度に学会誌への投稿という形で問うていきたいと考えている。またさらに、女性表象という観点において、本研究課題に大きく関わる論文を大学の紀要に発表できたことも付け加えておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、今年度に英国18世紀演劇における女性表象について考察してきたので、2014年度は、それに続く時代の演劇における女性表象について研究する。具体的には、1892年10月21日に、ロンドンのThe Opera Comiqueにおいて上演された、William Poel(1852-1934)による、John Webster 作『モルフィ公爵夫人』(The Duchess of Malfi, 1614)の改作における女性表象について、歴史資料にも言及しながら論じる。 Poel が執筆した台本は出版されていないため、本研究では、研究代表者が2005年に調査・写真撮影をした、ロンドンの演劇博物館所蔵のタイプスクリプトを基として行われる。このタイプスクリプトに関する本格的な研究は、国内はもとより海外でも、過去に例を見ないものである。本研究では、Poel の改作における女性表象を、1892 年の初演当時の社会的文化的背景と重ね合わせながら論じるなかで、"New Woman"といわれる先駆的な女性たちの存在がクローズアップされながらも女性に対する保守的な考え方が支配的であった当時の、男女の権力闘争の諸相を明らかにしたい。その際、The Nation(10 November 1892)、The Graphic(29 October 1892)などの新聞に収録されたPoelの改作についての劇評も活用する。劇評および19 世紀末の社会背景に関する資料収集や、資料整理等の事前準備も平行して進めていく予定である。研究期間内に、研究発表・論文として発表したいと考えている。
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