研究課題/領域番号 |
25884065
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森 美智代 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (00706658)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 美術史 / 石窟壁画 / 仏伝 / 誓願図 / 西域北道 / トカラ仏教 / ウイグル仏教 / 授記 |
研究実績の概要 |
研究初年度である今年度は、3月にインドに出張し、ニューデリー国立博物館において同館所蔵西域将来品の調査を行った。同館の協力を得て、展示室と収蔵庫の作品を網羅的に熟覧することができた。調査の主眼であったトルファン・ベゼクリク石窟将来の誓願図について、面積の大きな断片は移動が困難な処置が施されているため全体を精査することはかなわず、部分的な観察を行うにとどまった。それでもなお、現地遺跡に残されている壁画の痛みが甚だしく細部の判別が困難であることを鑑みるならば、比較的保存状態のよい断片を対象にした今回の調査は様式的観察の上で有効であった。また中インドの仏教遺跡を見学し、本生図に関連する資料を収集した。見学先は、アジャンター石窟、エローラ石窟、オーランガバード石窟、サンチー、マトゥラー博物館等である。 また誓願図の成立と展開を跡づけるための前提として、西域北道石窟のクロノロジーに関する先行研究を検討した。本研究が扱う7-11世紀の石窟年代に関しては、従来、唐仏教美術の影響が西域に及んだ時期と、それ以降に西域在来系統の石窟がどの程度存続したかについて美術史研究者の間の見解が一致していなかったが、美術史学的研究に加え近年の考古学的調査や文献研究の成果を援用して総合的な観点からの再検討を試みた。その成果の一部は論文に発表した。 同時に、誓願図の絵画表現と関連文献の関係について考察をすすめ、現在も進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、中国新疆ウイグル自治区クチャ地域における追加調査を予定していたが、現地情勢を鑑みて延期した。もっとも、同地域の誓願図作例については以前の調査でほぼ収集し、確認作業を残している状況であること、また研究計画の段階で新疆調査が実現できなかった場合、中国国外に流出した作例の調査に重点を置く予定であったため、研究の進展に大きな支障はない。上述のとおりインドで調査を行い、観覧を希望した作品のほぼ全てを実見することができた。また文献研究も予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はロシア・エルミタージュ美術館所蔵の誓願図の調査を予定している。同館所蔵品の調査をもって主要な(面積の大きい)誓願図断片の調査を完了する。その成果は、学会や論文等で随時発表する。
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