申請者は、本研究において、芭蕉の季語感の原点を探るべく、芭蕉の師と目される北村季吟の俳諧との比較を試みた。 前年度に引き続き、未翻刻資料の翻刻とデータベースの作成にあたった。前年度資料の取り寄せに思いの外、時間を割き、翻刻作業に遅れがあったが、本年度は、予定していた資料が全て揃い、翻刻作業が進んだ。それに伴い、季吟門データベースの基礎が築けた。その中で、季吟門連句の季の扱いの特徴が抽出できるなど、大きな成果があがった。 たとえば、実際のデータからは、使用された季語の実態が必ずしも伝統題の使用に限ったものではないということがわかった。歳時記記載の季題・季語を、句全体で表していたり、見慣れない季語を詠み込んでいたりするものや、季の句のはずだが、句中の季の詞がどの言葉と対応するのかが、一見して見えづらいものなどが散見された。しかも、こうした特色は、芭蕉一座と共通するものであり、今後の研究において大変有意義な研究成果を得られたといえる。また、「非季」とされた言葉の分析からは、季語と雑とをどのように区別していたのか、という季の認定の基準が見えてきた。こうした意味でも、本研究の研究成果は、大変大きく、今後の研究に大いに役立つものと考えている。 本研究においては、比較するにあたり、季吟の宗匠立机後、季吟が一座した連句、ごく親しい門弟の独吟というように範囲を限定した中で行ってきたわけだが、今後この限定を解除して、どの程度の門弟までこうした季の扱いが見られるのかの分析を行っていきたいと考える。次年度以降も継続して、この問題には取り組んでいくつもりである。
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