研究課題/領域番号 |
25884068
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
澤崎 文 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (40706644)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 上代日本語 / 文字 / 表記意識 / 万葉仮名 / 古事記 |
研究概要 |
本研究課題の目的は、上代日本語の表記を反映する資料である『古事記』に使用される万葉仮名を調査し、その実態を整理してそこに見える用字傾向と上代人の表記意識について明らかにすることである。上代の漢字万葉仮名交じり表記の資料である『古事記』の仮名表記を扱い、特に仮名が書かれる位置がどのような環境であるか、つまり当該の仮名の前後が、音仮名であるか、訓仮名であるか、もしくは用法としての漢字(正訓字もしくは漢語)であるかといった面に重点を置いている。本年度は、資料の分析・考察に先立ち、当該資料の文字表記に関する情報の収集と、『古事記』における万葉仮名データをまとめる作業をおこなった。 『古事記』の仮名データベースを作成するにあたって、真福寺本『古事記』を底本とする『古事記 修訂版』(おうふう)をもとに用例の抽出をおこなった。また、用例採集においては、『国宝真福寺本古事記』(1978 桜楓社)による底本の影印も適宜参照した。データの整理に際しては、以下の1~7項目の情報を加え、検索可能な形にして作成した。 1.どのような音節にどのような字母が使用されるか。2.その字母は訓仮名か音仮名か。3.どのような語を表記するために用いられるか。(固有名詞(人名、地名)か、それ以外か)4.どのような環境において用いられるか。(前後の文字用法が漢字か、訓仮名か、音仮名か)5.本文中、歌謡、訓注のいずれに用いられるか。6.本文中に書かれる場合、どのような示し方で用いられるか。(いわゆる以音注はあるか)7.使用される字母の、底本中の箇所。(何ページ・何行目か) 作業の結果、『古事記』全巻の仮名データベースを作り上げ、次年度の分析と考察に必要となる資料の土台を築くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は『古事記』の仮名データベースの作成と、それに際して必要となる『古事記』の表記に関する情報の収集をおこなう予定であった。データベース作成にあたって、当初の計画と異なる作業も一部発生した。たとえば、以音注との関係では、初出の語にのみ注を示し、再出の語には注なしで示されることも多い。その語の仮名書きが初出であるかどうかについても、検討してみる余地があるため、当初の計画にはない観点であるが、データベースに書き加えることを進めている(現在は上巻分のみ完成)。 このようにして、調査を進めていく上で、新たに有力な観点に気づき、補填していく部分はあるが、当初の計画から見れば、おおむね目標としていたところを達成しており、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作成したデータベースをもとに、『古事記』の万葉仮名表記やその表記意識について分析・考察をおこない、研究成果を論文として公表する。 2013年度に作成したデータベースを用い、とくに万葉仮名が書かれる環境に注目して、『古事記』の表記の分析をおこなう。さらに、そこで明らかになった表記意識を、上代における他の漢字万葉仮名交じり表記資料である『万葉集』や『続日本紀』宣命においてみられる万葉仮名の表記意識と比較し、類似点・相違点を明らかにしたうえで、『古事記』における万葉仮名を上代の日本語表記の中に位置づける予定である。
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