現代中国の大学専攻日本語教育は、量、質共に高水準にあるが、建国以来一貫して日本の「国語教育」の内容や手法を用いた文学教育によって「日本理解」が推進されてきた側面を持つことは近年まで意識されなかった。本研究の目的は、こうした教育がいつ頃から現れ、どのような内容とプロセスを経て確立されたかを明らかにすることである。そのために、1949年から2013年までの現代中国の大学専攻日本語教育において、各時期・各地域で教育実践、カリキュラム策定、教材開発に深く携わった経験を持つ教師と、各時期に日本語学科で学び現在日本語学科で教鞭を執られている教師計20名に対しインタビュー調査を行った。また、インタビューで得られた調査結果の裏付けと傍証としてドキュメント調査を行い、上海外国語大学、南京大学、南京三江学院、南京郵電大学、東南大学(南京)、四川外国語大学(重慶)、中国国際放送局(北京)、北京第二外国語学院、人民教育出版(北京)、大連外国語学院などの機関にて資料の収集を行った。 各調査で得られた研究成果は、それぞれに取りまとめ公開する準備を実施したが、今年度は2回の口頭発表(日本語教育史研究会「2013年度第1回研究発表会」/言語と人間研究会「2013年秋期(11月)例会」)と、2本の査読付き学術誌への投稿(全国大学国語教育学会『国語科教育』74号/日本語教育学会『日本語教育』156号)を行った。また、分野や業種の枠を越えた幅広い議論に繋がるようアウトリーチ活動にも取り組み、つくば市国際交流協会主催の日本語ボランティア研修会( 2014年3月)の講師、中国国際放送局の番組出演(CRIインタビュー 2014年3月5日収録、同年4月8日放送)等も担当した。 以上を通して、現代中国大学専攻日本語教育における日本の国語教育の需要と確立プロセスに関する研究を行った。
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