本研究は、文化進化論をテーマに人間を「展示した」1889年パリ万博を観た人類学者坪井正五郎が、後日企画した1903年「学術人類館」から、彼の理論背景と当時の社会状況が、どのように展示に反映していたかの理解を目的とした。 成果として①坪井の理論背景が欧米の当時の先端理論に類似し、社会進化論的単一進化論ではなく、文化伝播論的観点から日本人種を見出していたことが判明した。②学術人類館の「展示」の人間には、政治的にも人種的にも関わりの薄いジャワ人がいたが、ジャワ人は、植民地宗主国オランダ以外の博覧会へ頻回に展示されており、博覧会における「展示」される人を扱う産業に関する今後の調査課題が見いだされた。
|