研究課題/領域番号 |
25884073
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
根岸 純子 鶴見大学, 文学部, 准教授 (10708960)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 言語学 / 第二言語習得 / 評価 / スピーキング |
研究概要 |
当該年度では、以下の研究準備およびデータ収集を実施した。まず学内の倫理審査委員会にて研究計画および個人情報保護等に係る審査に通過した後、2大学各12名、合計24名の大学生に研究参加を依頼した。各被験者は、①単独で絵を描写するタスク1回、②ペアでの対話活動2回、③3名グループでの対話活動2回、の3形式・計5回の言語産出活動に参加するとともに、各形式の印象や感想を記述した。言語産出活動は、被験者の同意を得た上でビデオ撮影したのち、個人情報保護の視点から、被験者をグループ番号・着席位置による表示に変えた上で評価用ビデオを作成した。 次に、現職で英語教育に携わっている修士以上の学位を有する日本人5名の評定者が、評価訓練後、評価練習用の別ビデオを見ながら討議を実施したうえで、上述の評価用ビデオを見ながら評価を行った。評価基準は、近年、世界各地で使用されるようになっている「ヨーロッパ共通言語参照枠(Common European Framework of Reference for Languages:CEFR)」の日本版であるCEFR-Jを使用した。また、評定者は被験者の発話の特徴や評価の参考となったことについて記述した。 1年目は、準備およびデータ収集の年度であったため、2年目には、これらのデータ分析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画は、上記「研究実績の概要」にも記した通り、当該年度中に予定通り達成できたと考えている。科研費の交付が年度後半であることから、研究準備およびデータ収集、評価までの作業となったが、研究計画で予定していた内容については完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度の研究活動で得られた発話データを元に量的・質的、両面から分析を行う。まず、評価素点および被験者の感想について分析を実施し、データを概観する。次に、多相ラッシュ分析を用いた量的分析を行う予定である。第二言語による口頭試験においては評価者が評定を下すことが多いが、たとえ厳密な評価基準があったとしても、人間が行う作業であることから、主観が入ったり一貫性が損なわれたりすることもある。生じうる評価者の違いや課題の難しさ・被験者の能力等の複数の相facets、およびそれぞれの相互作用が評価に与える様々な影響を可能な限り相殺して、評価者の出した素点を測定値として推定するのが多相ラッシュ分析である。その結果算出されたデータにより、評定者が、同一被験者を、言語テスト形式の違いや、同等あるいは異なるレベルの被験者の組み合わせにより異なって評価しているのかどうかを解析する。 次に、音声をテキスト化し、量的・質的分析に資する。グループ・インタラクションの得点と相関係数の高いと思われる「語彙の種類」、「連語の数」「ポーズ時間を含んだ全会話時間」、「全シラブル数」、「全語数」の項目等についての分析を行う予定である。また、参加者同士がお互いにどのような形でインタラクションをしているのかを会話分析から探る「Global Interactional Patterns」と、どのような機能を使っているのかを探る「Interactional Functions」の2種類についての分析を行う。これにより、自然な会話に見られる意味の確認や交渉が行われているかについての知見を得るとともに、単独発話の特徴とペア及びグループ・インタラクションの特徴を比較し、複数被験者における口頭試験の提案が可能であるかを探る予定である。
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