本研究において以下のような研究実績をあげた事を報告する。 a)本研究は寺院における文献調査を基盤とするものであるが、平成26年度は、勧修寺、東寺観智院、仁和寺を中心として、ほぼ計画どおり調査を進行することができた。悉皆目録の作成を担当する寺院については確実にそれを進行させ、また本件のテーマである口伝・説話の収集についても着実に成果をあげるができた。 b)職場における調査・研究の拠点づくりについても、書籍、機材の充実など、着実にこれを進めることができたと考える。また資料の所蔵者、調査者、両者の関係を良好に保ち、信頼にたる事業として調査を進めるためには、継続的な人材の育成が不可欠である。着実に調査を進行するために必要なアルバイトなどの人材の育成についても、一定の成果を得たと考える。また本研究では寺院での文献調査を合理的に進めるためのデータベースフォームの構築を目指しているが、これについても暫定版的なフォームの完成など、一定の成果を得ることができた。 c)平成26年度は上記のような文献調査の成果を踏まえつつ、学術書『中世真言僧の言説と歴史認識』(平成25年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)255040、平成26年度に繰越)を刊行した。あらたな資料の発見によって最新の成果を活かすために一年繰越となったが、文献調査から得られる成果を踏まえ、中世寺院という社会において口伝や説話を動態として捉え、それらが中世文化全体に与えた影響を広く論じたものであり、学界にあらたな知見を示すことができたと考える。
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