研究課題/領域番号 |
25884093
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
三野 行徳 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (30714224)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 明治維新 / 武家 / 北海道移住 / アイヌ / 場所請負制度 / 士族 |
研究概要 |
本年度は、明治維新後の北海道内の地域社会における、武家の集団移住がもたらした変容と、現在にいたる地域の歴史像への影響を検討するうえでの基礎を構築すべく、主に以下の2点から研究を進めた。 ①亘理伊達家の北海道(有珠郡)移住に関する史料調査と研究 これまで予備調査として行っていた北海道伊達市における史料調査の成果に加え、今年度あらたに北海道札幌市(北海道立文書館・北海道大学付属図書館・北海道立図書館)と宮城県仙台市(宮城県公文書館)、宮城県亘理郡亘理町(亘理町立郷土資料館)、京都府京都市(京都府立総合資料館)において、亘理伊達家を中心とする仙台藩家中の北海道移住に関わる史料の悉皆調査を行った。また、これまでの研究成果の一部をまとめた「明治維新と武家の北海道移住 ―有珠郡における新たな共同体形成―」(旅の文化研究所『旅の文化研究所 研究報告 no.23』)を発表し、武家の北海道移住が、アイヌと場所請負和人とで構成される「場所」共同体に与える影響について検討した。 ②全国的な武家の北海道移住に関する史料調査 上記課題に加え、本研究テーマをより普遍的に位置づけるため、明治初年の北海道分領支配(武家の集団移住)に関する全国的な史料調査を開始した。まず、九州諸藩の北海道移住を検討するため、鹿児島県鹿児島市(鹿児島県立図書館・鹿児島県歴史資料センター黎明館・鹿児島大学付属図書館)で史料調査を行った。 以上の成果により、近代北海道や明治維新後の武家を検討するうえで、明治初年の北海道分領支配期の実態解明が極めて重要な課題であること、その分析素材・方法として、武家に残されたアーカイブズの復元と分析が有効であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主テーマである亘理伊達家の北海道移住について、史料が所在すると思われる地域の基礎的な史料調査を概ね終えることができ、また分析の成果を論文として発表することができた。また、そのなかで、亘理伊達家-有珠郡を分析する方法や基礎史料を、北海道の他の地域でも援用しうる見通しを得ることができた。本研究課題の目的では、ほかに仙台重臣片倉家(宮城県白石市-北海道登別市)、江戸幕府旗本五島家(長崎県五島市-北海道磯谷郡蘭越町)を分析すべきテーマとして掲げているが、この両家についても、札幌市や仙台市、東京都、京都府において史料調査を行い、基礎的な史料収集を行い得た。以上により、①基礎的な史料収集を概ね終えた②一部については分析を終え成果を発表した、という2点から、本年度の目的は概ね達成されたと考える。 一方で、①とくに五島家に関してさらに史料調査が必要であること②片倉家・五島家の分析が充分に進んでいないこと③九州諸藩等、本テーマをより普遍的に位置づけるための史料調査は今後の大きな課題であること、の3点は、次年度の持ち越された課題である。 以上の点から、おおむね順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進にあたっては、以下の3点を主軸に行う。 ①亘理伊達家について、これまで得られた史料調査の成果をまとめ、史料群をデータ上で復元的に再構築し、亘理伊達家-有珠郡の研究のための基礎を構築するとともに、分析をさらに進める。分析にあたっては、場所請負制度・アイヌと移住武家との関係を、漁業をめぐる社会関係とその変容・開拓の進展と地域の生業の変容を視点にあて、武家の北海道移住がもたらす地域社会の変容と、その後の歴史像についての基礎モデルを構築する。 ②五島家・片倉家について、引き続き史料調査を行うとともに、亘理伊達家の分析モデルを念頭に分析を進める。 ③亘理伊達家をモデルに武家の北海道移住・北海道分領支配を解明するため、北海道分領支配に関わった全領主について、史料調査を行う。分領支配に関わった領主は三八あるが、東北諸藩の分領支配を除き、充分に研究されているとは言いがたい。そこでまず、九州諸藩(佐賀藩・鹿児島眼・熊本藩・福岡藩)の北海道移住について分析するため、九州での実地調査を行い、文献・目録レベルでの基礎データを集積する。 また、②③に関わって、札幌市(北海道立文書館・北海道大学付属図書館)に基礎史料が集中して残されているため、札幌市での史料調査を重点的に行う。 以上より、①②からこれまでの成果をまとめ、モデル化を進めるとともに、③により、より普遍的な課題として、明治初年の北海道分領支配・武家の北海道移住を位置づけるための基礎作業としたい。
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