本年度は、明治維新後の北海道内の地域社会における、武家の集団移住がもたらした変容とその後の展開を検討するうえでのモデル構築のため、主に以下の2点から研究を進めた。 ①亘理伊達家の北海道(有珠郡)移住について、移住に同行した家臣の視点および、移住しなかった家臣の視点から検討すべく、北海道伊達市・宮城県亘理郡亘理町での史料調査と研究発表を行った。主な成果としては、『北海道伊達市大雄寺所蔵亘理伊達家中諸家文書目録』を作成・公開し、亘理町で開催された講座において、「村木孝英の近世・近代―近代社会のなかの亘理伊達家中―」として報告を行った。 ②武家の北海道移住の歴史的意義を全国的に検討すべく、東北諸藩と九州諸藩(含交代寄合富江五島家)についての史料・文献調査を行った。いずれも関連する史料の集中している北海道札幌市(北海道立文書館・北海道大学付属図書館)・東京都(東京都公文書館・国立公文書館)での調査を中心に、東北諸藩についてはとくに宮城県仙台市(宮城県立公文書館)・白石市で調査を行い、九州諸藩については自治体史を中心とする文献・目録調査を行った。 以上の成果より、明治初年の北海道分領支配が全国的な武家社会解体過程と密接に関係しており、武家社会解体過程の一環として位置づけるべきことが明らかとなった。分領支配の個別の事例についても、今年度収集した史料からは、昨年検討した亘理伊達家モデルをベースとした北海道分領支配の再検討が分析方法として有効であると考えられ、東北・九州諸藩を中心とする分領支配の再検討が可能であることが明らかとなった。
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