研究課題/領域番号 |
25884095
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
浜田 明範 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 機関研究員 (30707253)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 生権力 / 生物医療 / 統治 / 結核 / ガーナ |
研究概要 |
初年度となる2013年度は、当初の予定通り、ガーナ南部の農村地帯における結核対策プログラムに関する文字資料の収集・分析と現地調査を実施した。具体的な成果として、(1)当該地域の結核対策プログラムは患者の発見に力を入れていること、(2)看護師に対する働きかけが焦点化していること、の二点が明らかになった。 ガーナにおける結核に関する文字資料は、結核のみに焦点を当てたものよりも感染症対策という枠組みの中でHIV/AIDSやマラリアなどと共に包括的に議論しているものが多い。それらを含め、現地やネットを通じて収集した文字資料を分析した結果、結核対策に関しては投薬管理などの患者に対する統治は一定の水準を満たしているとされ、結核に感染していながら患者と診断されていない人をより多く発見するための対策に重点が置かれていることがわかった。 現地調査を実施した農村地帯においては、患者の発見は看護師への働きかけを通じて強化することが目指されていた。看護師たちは、外来を訪れた、咳を頻繁にしている患者に塗抹検査を指示したうえで、その結果にかかわらず登録し、リストを作成している。その上で、そのリストに基づいて家庭訪問という形で村落内部を歩き回りながら、結核やその他の病気が疑われる患者を発見することが求められていた。 このように、当該地域の結核対策プロジェクトでは、投薬管理のような患者に対する統治よりは看護師に対する統治が重視されている。しかし、このことはガーナ政府が主張しているように患者への投薬管理がすでに十分にうまくいっていることを意味しない。現地調査では、患者に対する投薬管理に対する看護師の遠慮のようなものを感じる場面が多々あり、薬剤の服用が定められた通りなされているかどうかは必ずしも確認されていないからである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2013年度は、(1)政府機関や国際NGOにおける聞き取りと文字資料の収集、(2)結核対策の全体像の解明、(3)看護師への注目と複数の統治実践の連環、の三点を中心に研究することになっていた。これらの諸点については、多少の追加調査が必要とされる状況にあるものの、おおむね当初の計画通り調査することができている。同時に、2014年度以降に調査する予定であった(4)モノとしての薬剤とドキュメントへの注目、に関しても、予定を前倒しして調査を進めることができているため、総合的には順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2014年度が最終年となるため、2013年度に行った現地調査を発展させる形で引き続き現地調査と資料の分析を行っていく。その際、前項目の(1)~(3)について引き続き調査と考察を深めていくほか、当初の計画通り、2014年度に実施することを予定していた、(4)モノとしての薬剤とドキュメントへの注目、(5)結核対策による人間関係の再編成、(6)支配的な言説の具体的な現われ、といった調査項目についても対象を広げて、粛々と研究を実施していく。
|