研究課題
本研究の最終年度にあたる2014年度は、当初の計画通り、ガーナ南部の農村地帯において現地調査を実施した。具体的な成果として、以下の3点が明らかになった。まず、結核治療においては、毎日欠かさず、決まった時間に薬剤を服用することが求められるが、ガーナにおいては、必ずしも国際的に標準化されているように看護師の面前で薬剤が服用されているわけではない。これは、看護師の怠慢というよりは人員不足のためである。このような、標準的な治療の失敗の結果、患者はむしろ主体的に薬剤を服用する必要性に駆られており、配布される服薬チェックシートは患者の主体化を支える重要なツールとなっている。次に、結核患者を取り巻く人間関係の再編成は、部分的には、乳幼児との接触を避けるように促す結核対策の影響と言えなくもないが、それにもまして、患者の経済状況や患者の家族によるより良い生の希求に影響されていることが明らかになった。長期の治療を必要とする結核は、貧困と負のスパイラルを起こすことが多く、治療の成否は経済状況と密接に関連する。そのため、患者がどのような規模の家族の中でどのような役割を担っているのかが治療にとって重要になるのだが、この家族の状況は、患者自身だけでなく、他の家族の希望によっても変更され続けていた。最後に、ガーナにおける結核対策における「生かすべき者」と「死ぬに任せる者」の選別は、結果的に、担当看護師の本気度や柔軟さ、経験に依存していることが明らかになった。結核対策を担当するコミュニティ・ヘルス・ナースには、患者を早期発見するためにコミュニティを巡回することが推奨されているが、その他の感染症対策や乳幼児健診も担当する看護師達には十分な時間が与えられていない。そのため、結核患者へのケアの質は、個々の看護師の性格や経験に依存することになっている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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一橋社会科学
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