本研究の目的は、文献史料・考古資料を含めた史的情報を資源化し、有効な活用方法を模索することである。実証的研究として近世における石材生産と運搬の実態解明をテーマとしている。 2014年度は、香川県小豆島の岩谷石切場を調査した。従来、文献史料によって、大坂城普請の体制は、幕府-藩-家中組の重層的な体制によって推進されたといわれているが、現場レベルの作業編成はよくわかっていない。 そこで石割途中で放棄された石材を詳細調査した。 石材の表面観察と矢穴の縦断面形状の計測によって、採石に従事した作業集団の特質や作業編成を明らかにする手がかりを得た。 少人数で分散して採石するのではなく、多人数を特定石材に集中的に投下し、短期間に石材を採石していく風景を復元できた。また作業従事者は、非熟練労働者であり、技術のバラツキを前提にした採石方法を採用していた可能性がある。 これは文献史料と考古資料(採石痕跡)の史的情報の結合によって、実態解明に資することができた。
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