2014年度の目標は,状況と発話内容を考慮した質問音調記述モデルの構築である。具体的には,質問音調の変動に関与すると考えられる発話の機能的要因(質問タイプ)や話者の態度的要因,そして言語的要因について,前年度に行なった対人関係に基づく語用論的要因に基づく分析の結果と総合し,韻律記述の妥当な枠組みを作りだすことである。 以上の目標に基づいて,2014年度は,話者の心的態度を示す感動詞が先行する場合(態度的要因・言語的要因)や,聴者が複数で話者が質問の相手を特定していない状況(機能的要因)では,そうでない場合と比較して質問発話末の持続時間が延伸する傾向にある,ということが示された。また,同一人物が話し相手との関係性によって質問音調を変えるという対人的要因も,自然対話データから改めて示された。当科研の成果を総括し,記述の枠組みについてまとめ,検討した論文は2015年度中に投稿予定である。 自然対話音声に基づいてこれらを分析することによって,話し言葉の持つ自然で豊かな音声コミュニケーションの一端が明らかになり,日本語学習者を対象にした音声教育や人体ロボットの音声インタラクション研究に有益な知見をもたらことが期待される。
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