研究実績の概要 |
本研究の目的は、中小企業への入職後に発生する雇用のミスマッチの要因を探求することである。そこで、中小企業の従業者に求められる「コンピテンシー(行動能力)」に着目し、大学教育における職業的レリバンス(関連性)の現状とどのような接続関係にあるのかについて検討を行ってきた。最終年度に当たる本年度は、第一に定量的調査(アンケート調査)の実施、第二にデータの整理と分析、及び補足調査、第三に研究結果のまとめと発表を行った。以下に、成果を具体的に示す。 1.北海道、関東、九州の中小企業3,462社の、経営者と従業者を対象にアンケート調査を行い、経営者367名、従業者679名から回答が得られた。 2.アンケート調査で得られた調査票をデータ化し、分析を行った。実際に人事考課・評価の指標となっている「コンピテンシー」について、データの不足を補うため、補足調査として中小企業経営者に対する聞き取り調査を実施した。これにより、経営者が従業者に求めているキーワードとして、「挨拶」、「調和」、「市場対応スキル」が抽出された。 3.平成25年度から行ってきた資料調査、定性的調査、定量的調査の結果をふまえて、分析、考察し、結果を自らが所属する学会において発表した。本研究の課題である雇用のミスマッチの要因のひとつとして、経営者と従業者の期待の差異が示された。具体的にいうと、1)経営者が求めているのは市場に対応するスキルの向上、2)従業員が求めているのは到達目標に具体的明示とそれに必要な教育訓練、であり、そのギャップの存在がミスマッチの要因と深く関係しているということである。また、その両者のギャップを埋めるキーワードとして、「教育訓練」と「相互コミュニケーション」がインプリケーションとして導出された。
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