中学校学習指導要領では,理科の学習内容を「エネルギー」,「粒子」,「生命」,「地球」といった概念で再構成することが教科の目標の一つとして示されている。これらの概念のうち、特に「エネルギー」については,その抽象性が高く理解に困難が生じやすいことがかねてから指摘されてきた。また、科学用語としての「エネルギー」と、日常語としての「エネルギー」があることが認識されているものの、その使い分けについては、教科書の記述の中では明確に指摘されていないという状況である。そこで国内の中学校で使用されている中学校理科教科書における「エネルギー」の使用状況を調査し,分類などの作業を経た上で考察をおこなった。その結果,次の3点が明らかとなった。 1)「エネルギー」は,主に第1分野(物理・化学分野)で扱うことになっているが,第2分野(生物・地学分野)においても頻繁に用いられている。特に使用数が多かったのは「動物の生活と生物の変遷」単元である。 2)「エネルギー」の定義を学習するのは第3学年であるが,第1学年の教科書にも「エネルギー」が、例えば「植物の生活と種類」単元で用いられている。 3)「エネルギー」は「取り出す」,「もっている」といった表現と共に用いられているが、文脈によってその意味が異なることを指導者側は意識する必要がある。 これらを検討した結果,「エネルギーを取り出す」,「エネルギーをもっている」といった表現を理解させるための学習プランが第1学年から必要であることが示唆された。
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