研究課題/領域番号 |
25885014
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小泉 友香 筑波大学, 人間系, 特任研究員 (30707469)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | ドイツ / 算数・数学科授業 / 相互作用 / 発問-応答過程 |
研究概要 |
本研究の目的は、日独両国という異なる文化的・社会的背景の下で行われる熟練教師による算数・数学科授業にみる相互作用の形成過程の特徴について、一連の発問-応答過程の構造および授業事象に対する授業者と学習者の意味構成を視点とした比較文化的研究を展開することによって、授業という複雑な事象を成立させうる日本の授業の文化的特質に関する新たな知見を提供することである。 上記の目的を達成するために、平成25年度は、第1に、小学校児童を対象としたデータ収録方法の理論的・実証的検討すること、第2に、日本における新規授業データの収録を行うことを計画した。 第1の課題に対して、ビデオ映像の収録方法、及びインタビュー方法についての検討を行った。その結果、日本の算数・数学科授業に特有な「自力解決」における教授行動も捉えるために、カメラの位置を固定せずに教師を追跡し、個別の児童への発話内容や身体的動作を捉えることの必要性、及び2名の抽出児童のうち主として記録の中心となる1名に焦点化して収録する方向性が確認された。インタビュー方法については、映像に加えて、板書の記録も利用することの有効性が確認された。 第2の課題に対して、本年度は新規授業データの収録を行わなかった。その理由は、これまで公立小学校における「比例」に関する授業、及び国立大学附属小学校における「異分母分数の加減」に関する授業の収録を行っているが、データの詳細な分析については不十分であったため、及び後者のデータの整理が完了していなかったためである。本年度は「比例」の授業を中心に詳細な分析を行い、その成果を日本科学教育学会の年会、及び学術雑誌(ZDM: the international journal on mathematics education)へ投稿した。また「異分母分数の加減」の授業に関するトランスクリプトの整理を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の課題に対しては順調に進展したが、第2の課題で予定していた新規授業データの収録については、既存のデータの詳細な分析について不十分であること、及びデータの整理が完了していなかったために行わなかった。一方で、「比例」の授業に関する分析結果を日本科学教育学会の年会で発表したところ、年会発表賞の受賞が内定するなど、研究成果に対する評価を得ている。また、平成26年7月にカナダで行われる数学教育心理研究国際学会(PME)において論文発表を行うことが、査読を経て決定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度より研究代表者の所属機関が変更となり、その職務遂行上、長期の出張が困難となった。これに伴い、当初予定していたドイツにおける新規授業データの収録を取りやめ、既存のデータの詳細な分析を進めることに変更する。具体的には、日独両国の中学校第2学年数学科授業及び日本の算数科授業について、第1に、一連の算数・数学科授業で扱われた課題にみる数学的構造の特定、第2に、活動の形態と機能および数学的内容に基づく授業事象の特定、そして第3に、授業事象にみる一連の発問-応答過程の分節化と構造の明確化を行い、比較文化的に考察する。加えて、インタビューおよび質問紙調査にみる当事者の認識の顕在化を行う。これにより、日独両国の比較考察から顕在化する日本の算数・数学科授業の文化的特質について、実証的に探求する。
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