本研究の目的は,日独両国の熟練教師による算数・数学科授業にみる相互作用の形成過程の特徴を比較し、日本の授業の文化的特質に関する新たな知見を提供することである.その結果、日本の授業では,多様な表現の一体化した理解を形成すること,及び新たな概念の導入に関わる一体化した文脈を創出することが目指され,これらに関わる営みが「仕組まれた問題解決」の主軸を成していることが明らかになった.その際,教師が矢印表記や手差しによって丁寧に「注目された焦点」を示し定義へとつないでいることや,発話だけでなく様々な表現の仕方を介して,子どもの視点を制御していることが明らかになった.
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