今期は前年度に得られた知見を他学会および複数地域の研究会で公表すること、および第三者型の義務付け訴訟についての知見を得ることに注力した。 まず、日本公共学会でのセッション「司法と政策・行政―司法過程による政策法務の可能性」では、政策法務を中心とする研究者および実務家の視点からの多数の意見交換がなされた。そこで得られた「再度の行政過程」に関し、条例制定過程や法執行の場面にも視野を広げることができた。そこで、連載中であった国家学会雑誌論文の第6回(完)において、将来の展望を示すことができた。 また、ドイツ(ゲッティンゲン大学図書館)での調査においては、ドイツの行政訴訟における弁護士・裁判官の訴訟追行に関連する実務書など、義務付け訴訟制度運用の鍵となる「事案解明」についての示唆が得られた。また、日本に文献が存在しないために昨年度は確認できなかった資料の裏付けもとることができた。 他方、第三者型の義務付け訴訟については、全国的にみて数少ない実例である福岡県において県側のインタビューをする機会に恵まれた。研究実施計画ではこれらを踏まえて今年度中に論文として公表する予定であったが、当該事例の紛争が未だ潜在するために追跡調査が必要であり現時点での公開になじまないこと、また、本研究に関連して書籍出版の計画が持ち上がったことから、引き続き検討することとし、書籍出版時に反映することとした。 そのため、年度後半は公表論文執筆ではなく、北海道大学公法研究会、関西行政法研究会での報告と、東京大学公法研究会での書評会を行い、本研究の到達点の確認と今後の研究上の発展可能性について討議を行った。その結果、当初想定していなかった研究手法上の問題点と限界も含め、多数の指摘を受けた。これらは遅くとも平成28年度中に発刊する書籍において反映する予定である。
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