研究課題/領域番号 |
25885019
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
萱場 豊 東京大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (00708612)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 神経経済学 |
研究実績の概要 |
本研究課題-行動経済学への応用を踏まえた神経経済学の研究-における、平成25年度の取り組みとして、金融市場において価格が急激に変化する、いわゆる「ジャンプ」を含む意思決定に関係する脳活動の解明の研究を行った。 金融市場において価格が急激に変化するジャンプがしばしば観察されるが、その際に人間はジャンプが生じる背景にある理由について様々な憶測を行い、背景に何か本源的な変化が起こったものと考えるケースが多いことが報告されている一方、実際には、ジャンプが生じてもそれは一過性のもので元の水準にすぐ戻るケースも数多く報告されている。本研究では、ジャンプが生じた際、①ジャンプが起こっても価格水準が元の水準に戻らないケース、②ジャンプが起こると価格水準が元の水準にすぐに戻るケース、の2つの事象において、どのように脳活動が異なるのか、行動データを脳活動のデータと突き合わせて分析を行った。 結果、価格にジャンプが起こった際、それが元の水準に戻ってくる過程を観察した場合に特異的な脳活動が明らかになった。より具体的には、anterior insulaやinferior frontal gyrusにおいて、より大きな活動が観察された。この研究成果は、神経経済学において代表的な学会であるSociety for Neuroeconomicsの2013 annual meetingで予稿段階のものが報告されている(“Neural Control of Sensory Signals to Outliers in the Human Brain” with P. Bossaerts and M. d'Acremont)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度中は、当初の予定と異なる実験結果、すなわち、当初予定したジャンプが生じる際に元の水準に価格が戻る課題と元に戻らない課題で、特異な脳活動が生じるという結果でなく、元に戻る課題において、ジャンプした水準から元に戻る際に特異な脳活動が見られるという実験結果が得られたため、その解釈に時間がかかったものの、科研費繰越年度に当たる2014年度中において、今回の発見と整合的な先行研究を整理することができたため、結果は無事とりまとめられて神経科学の代表的な学会誌(Journal of Neuroscience等)に投稿、査読者の有益な意見を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、査読者の意見を踏まえて、結果の取りまとめの方向を検討する。
|