研究課題/領域番号 |
25885021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅原 慎矢 東京大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (30711379)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢化 / 有料老人ホーム / 世代重複モデル |
研究実績の概要 |
平成25年度の中心課題として、九州大学宮澤健介准教授との共同研究により、高齢化を取り巻く制度変化の影響に関するマクロ経済学的分析を行った.本研究では、経済主体の多様性を認めた世代重複モデルを構築し、コンピュータによるシミュレーションを行い、長期的な影響を考察するものである。本年度の作業により、使用するモデルについては考察が完了した。平成26年度にシミュレーションの実証を行う予定である。上記マクロ経済分析を先行させた結果、元来行うはずであった課題に関する予算を繰り越し分とした。 また、採択研究課題の一つである介護企業の参入分析に関しては、以前より行っていた、日本の有料老人ホーム市場に関する研究を論文"Firm-driven Management for Longevity Risk: Analysis of Lump-sum Forward Payments in Japanese Nursing Homes"にまとめ、平成25年度中にディスカッションペーパーとしていったん出版したが、その後も繰り越し分予算を用いて拡張・改訂を行い、2014年7月に査読つき学術雑誌に投稿した。該当論文は現在リバイズ中であり、改訂後の最新バージョンの公開はしていない。該当論文の要約は以下である。日本の有料老人ホーム市場においては、「入居金制度」という名で、入居時に生涯家賃を一括先払いするという経済慣行が存在する。この慣行は、長寿リスクの負担を老人ホーム側に完全に委ねるというものであり、その影響は自明ではない。本研究では、産業組織論に基づく詳細な需要・供給モデルを構築し、実証分析を行った。分析の結果として、この慣行が消費者に過大な支払いをもたらしていることを示した。高齢化の進展によって施設介護の効率化に注目が集まる中、適切な政策介入の方向性を示した点で重要な示唆を持つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画とは細部で若干異なる研究を行っているが、高齢化にかかわる重要課題にかかわる分析手法に関する研究が進み、該当課題についての意味ある成果が得られている。また、研究成果の公開も順調に進んでいる。研究成果の論文がまだ出版許可が出ていないことについては課題であるが、すでに投稿は行っているため、この点は時間の問題であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マクロ経済分析については、現時点でモデルの選択がなされたため、今後はシミュレーションの実装と論文執筆を行う。また、その他の課題として、家計による介護サービス選択については、平成26年度中に理論研究をおこなうため、沖縄国際大学金城敬太氏と相談を行っている。
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