研究課題
研究活動スタート支援
平成25年度は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ者のコミュニケーションの特性の理解やより過ごしやすい空間環境設定を明らかにするため、ASD者にとっての最適な対人距離(パーソナルスペース)、その発達的変化について主に研究を行った。快・不快を感じる最適な対人距離の特定実験及び発達変化に関する研究において、主に研究が進んだ。具体的には、中高生のASD児と定型発達児のパーソナルスペースを、実験者である研究者に対して参加者が向かってきてもらう場面及び実験者が参加者に向かっていく場面で測定し研究を実施した。その結果、ASD児が定型発達児よりもパーソナルスペースが狭いこと、また、両群において相手に接近される場合にパーソナルスペースが広くなり、かつ、実験者が接近する場合のみアイコンタクトの効果が見られることが分かった。また、人ではなく、物を対象とした研究では、ASD児が定型発達児よりもパーソナルスペースが狭いという傾向は接近対象により変わらず、両群で物よりも人に対してパーソナルスペースが広いことを示していた。また、成人のASD者に対しては、平成25年度は、実験結果との関連を見るデータの取得を主に行った。具体的には、診断情報と知能検査及び自閉症関連スコア(ADOS/AQ)のデータ取得を行った。これらの対象者に対して、平成26年度は、仮想的な歩行空間での実験などのデータを取得する予定である。
2: おおむね順調に進展している
快・不快を感じる最適な対人距離の特定実験に関する研究では、研究データの取得は終了し、既に、2014年3月の発達心理学会で発表している。現在は、論文執筆の段階にあり、その点に関して順調に進展しているといえる。
1. 仮想的な歩行空間での歩行者の歩行方向特定実験 歩行衝突判断課題の映像を用い、参加者は、映像の歩行者がそのまま歩いてきた場合、参加者が立っている白線の上のどこに到達するかを回答してもらう。この実験は、歩行方向知覚実験の結果が、単純な方向知覚の特性により生じているのか、それとも、方向知覚の特性によらない参加者がどの範囲までを自己の範囲であると感じているかにより生じているのかを検討する確認実験として行う。2. 仮想的な歩行空間での人ではない物体との衝突判断実験 スクリーン上に被験者に向かって近づいて来るのが人ではない物体(例:ロボット)の場合で、参加者のパーソナルスペースが異なるのかを検討する。定型発達者を対象とした触覚経験に関する研究では、対象が人間である場合において、マネキンである場合よりも相手のパーソナルスペースへの感受性が高くなることが知られている(Teneggi et al., 2013)。また、高橋・宮崎(2011)では、対象が人かそうでないかによって態度を変えることの担当部位であると想定される前部島皮質にASD者が特異性を持つことを示唆している。以上のことから、ASD者は接近するのは人であれ物体であれパーソナルスペースが変わらない可能性が考えられる。人でない物体が接近する際のASD者のパーソナルスペースを計測し、人が接近する場合と比較する。3. 現実場面の様々な状況での対人距離 本計画では、昨年度に行った最適な対人距離の特定実験を突き詰めるべく、既に計画にあった仮想状況での対人・対物距離研究を、実際の場面で行う。それにより、ASD者の対人距離がどのような状況・要因(例:周りに置かれている物体などの環境との相互作用)により影響を受けているのかを明らかにする。
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