研究課題/領域番号 |
25885028
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀樹 東京大学, 社会科学研究所, 研究員 (80712075)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 社会的排除 / 高等専修学校 / オルタナティブな支援 / 不登校 / 学業不振 / 非行 |
研究概要 |
今年度は第1に、社会的排除のリスク下にある子ども/若者へのオルタナティブなプログラムに関する文献の収集・レビューを行った。収集した文献としては、当初予定していた"At-risk Students"にかんする欧米圏の文献のみならず、犯罪者の「立ち直り」(社会再参入)支援に関する文献や、精神保健福祉サービスにおけるストレングス・モデルに関する文献なども含めた。その結果、事例とする高等専修学校での自立支援との共通点として、①生徒/卒業生たちが有する長所や資源に働きかけるアプローチが有効であるという点、②対人関係の形成を重視したアプローチが有効であるという点、の2点が見出せた。 第2に、高等専修学校の生徒26名へのインタビューを再分析し、改めて教員へのインタビュー調査を行うことで、社会的排除のリスク化にある生徒たちが進路を決定して卒業するメカニズムを探究した。その結果、狭義の進路指導に限らず、学校でのさまざまな経験(部活動、教師や障害をもつ生徒との交流など)が生徒たちにポジティブな自己像を提供し、進路決定に重要な意味をもつことがわかった。これらの分析については、日本教育社会学会での報告と論文化を行った。 第3に、高等専修学校の卒業生の会合に参加し、さらに卒業生2名にインタビューを実施することで、卒業生の就業・就学継続の様相について把握を試みた。卒業生のインタビューからは、学校在学中に継続された生徒間関係や教師=生徒関係が、就業・就学を継続する大きな支えとなっている様子が語られた。 第4に、高等専修学校を含む非主流の後期中等教育機関が社会的排除のリスク下にある子ども/若者に対して果たす役割について、主に不登校の子どもに焦点を当てながら、英語圏向けの書籍の1章として執筆した。その際、日本語から英語への翻訳を依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会的排除のリスク下にある子ども/若者へのオルタナティブなプログラムに関する文献レビューでは、当初の予定より収集する文献の幅を広げたことで、事例研究との共通点を発見することができた。高等専修学校での進路形成に関する学校内調査は今年度中に成果としてまとめることができ、卒業生調査も見通しがついた。また、海外向けの書籍を分担執筆する機会にも恵まれ、そこでも高等専修学校での教育支援・自立支援の一端を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は調査を続行するとともに、積極的なアウトプットを予定している。第1に、卒業生へのインタビュー調査の協力者を継続して募り、その調査結果を9月の日本教育社会学会で発表する。第2に、不登校生徒に焦点を絞り、教育支援・自立支援とその帰結について国際会議で報告する。第3に、高等専修学校の卒業生の自立プロセスを、他のさまざまな調査結果と比較することで、高等専修学校の自立プロセスの特殊性と支援の長所・課題を整理する(学内外などの研究会で発表し、次年度に学会報告を予定)。
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