日本では、社会的排除のリスク下にある子ども/若者の多くが、定時制高校・通信制高校・高等専修学校・サポート校などの非主流の後期中等教育機関に受け入れられてきた。本研究では、高等専修学校を事例とし、①生徒たちにどのような教育支援・自立支援が行われるのか、②その支援は卒業生の社会的自立のプロセスとどのように関連するのか、という2点を描き出すことを目的とした。 今年度は、具体的に以下の2点について成果報告を行った。 第1に、事例の高等専修学校で、生徒たちを卒業後の進路へと送り出すためにいかなる教育支援を行っているのかについて、論文執筆と国際会議でのポスター発表を行った。具体的に述べると、①特別活動や部活動、専門コースの授業、進路行事・職業体験の機会などを充実させることによる、学校内の多彩な出来事の創出、②「やりたいことがある/やりたいことを探している」フリーターに出会うような学校外の出来事(アルバイト、学校外の仲間集団との交流)の制御という2つの教育実践が、生徒の進路決定に重要な意味をもつことが明らかになった。 第2に、事例の高等専修学校の卒業生たちにとって、いかなる教育支援が卒業後の就業・就学継続に有効であったかについて、卒業生のインタビューをもとにまとめ、学会発表を行った。具体的に述べると、高等専修学校在学時の教師の話の内容や教師・友人とのつながりが、卒業生の就業・就学の継続を促すような「想起される学校経験」となりうることが見出せた。しかし、卒業生の語りからは、就職先・進学先への定着を促す「辞めないための指導」が同時に離職・中退した者の社会的自立への困難にもつながりうるという、指導上のジレンマも見出された。
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