研究概要 |
本研究は、国連安全保障理事会が、国連憲章第7章に基づき加盟国に一定の行動を「許可する(authorizes)」行為が、憲章の諸規定に対する例外、逸脱又は適用除外(以下、「例外設定等」)を生じさせていると思われる実態を、国際組織法その他法理論から批判的に検証することを目的とするものであり、平成25年度は、安全保障理事会の解釈権限に着目した文献調査を実施した。 まず、明文規定はないものの、安保理自身にそうした解釈権限が存在するかどうかについての問題は「黙示の権限」の法理として扱われるところ、この問題に関する有益な文献を幾つか収集できた(例えば、Engstrom, V., Constructing the Powers of International Institutions (Martinus Nijhoff Publishers, Leiden, 2012)。 次に、「許可」という実行が、条約法上、国連憲章の適用につき「事後に生じた慣行」として扱われるものであるところ、この問題に関する有益な文献を幾つか収集できた(例えば、Nolte, G. (ed), Treaties and Subsequent Practice (Oxford University Press, Oxford, 2013)。 そして、安保理が「許可」決議を出すようになった背景が、競合する規範間の衝突を回避するための行為であることに鑑み、規範衝突の問題を扱った国連国際法委員会「国際法の断片化」報告の検討を実施したところ、特に「特別法優先原則」においては規範の“適用”と“例外”が両立し得るものとして扱われていることなど、安保理による「例外設定等」という実行を理論的に検討し得る材料を幾つか得ることができた。 また、英国国立公文書館において調査を実施し、国際軍に関する有益な資料を多く入手した。
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