平成26年度は、「例外設定等」という現象を生じさせる安保理の憲章解釈権限を批判的に考察するにあたり、(1)「許可」の実行が必要とされる国際社会の政治状況ないし状況圧力、(2)国際社会の秩序構造の現状とその特質、(3)解釈権限を根拠づける既存の解釈理論への批判的な視座などの論点を踏まえ、総合的な問題把握を目指した。
(1)及び(2)に関しては、世界法学会公募報告(平成26年5月)及びその報告に基づく学会誌掲載論文「国連憲章第7章によるグローバル・ジャスティスの道程―いわゆる『許可(authorization)』の実行を中心に―」『世界法年報』第34号(平成27年3月)において、「正義論」との関連の中でその検討を行った。「許可」の実行が主権国家体制に基礎づけられ、派遣国の国益や政策判断に影響を受ける事の限界と、しかし派遣国の意志と能力に依存せずには実施できないという構造が明らかになった。 (3)に関しては、平成25、26年度に収集した文献資料の分析を通じてその批判的検討を進めた。学説上、安保理の憲章解釈権限については、条約法条約に基づく文言的・制限的なアプローチと、国連の実行を合法性根拠として積極的に評価する組織法的アプローチが対立するところ、憲章第7章の軍事的枠組みついては、両アプローチを統合・包摂・止揚する“公法的”アプローチの導入が可能かつ妥当であるとの示唆を得た。国内法秩序において活用される「例外措置」「適用除外」という法的技術は、公的機関の判断によって用いられる場合もあり、また、法令に明文規定が存在しない状態でも黙示的に許可されることもある。“公法的”アプローチからすれば、安保理の「許可」も、安保理による公権的な権限行使としての黙示的な「適用除外」として機能しているとみなし得る。
本研究の最終的な成果については現在執筆中であり、平成27年度中に公表の予定である。
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