研究課題/領域番号 |
25885034
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
尾田 基 一橋大学, 大学院商学研究科, 特任助手 (00709686)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 政治参加 / 諮問機関 / 審議会 / 懇談会 / ロビイング / 政策形成 |
研究概要 |
平成25年度は行政上開催される審議会及び懇談会のデータ収集を行った。データ収集は,会合日等からなる会合データと,各会合の委員とその肩書きからなる名簿データに分けられる。データ整備は会合データの全てと,名簿データの半分までが完了している。 会合の開催状況のデータについての分析から得られた基本的な発見事実としては,1. 古い会合のデータについては収集精度に問題があるということ,2. 基本的政策型審議会というカテゴリーに属する審議会の開催回数が近年減少傾向であり,割合としては懇談会が多用される傾向があること,3. 省庁によって,審議会と懇談会の使い分けの仕方が異なることが明らかになった。 また,審議会か懇談会の片方のみを開催する傾向にある省庁について,それらの会合区分が形骸化していないかどうかの確認を行った。審議会の名称で懇談会のような会合を開催するとか,懇談会の名称で審議会のような内容の討議を行うなど,実質的には多様な会合内容を含んだ会合を,単一の名称の元で開催する可能性があるからである。開催期間に関して,片方のみを多用する省庁群と,両方を使い分ける省庁群を比較したものの,顕著な差は見受けられず,形骸化の傾向は確認できなかった。 形骸化の傾向が確認できない以上,審議会のみを活用する省庁,懇談会のみを活用する省庁にはそれぞれコミュニケーション・チャネルに独特の特徴を有していると考えられる。懇談会のみを活用する省庁の場合,最初の接触はできても,その後のチャネルの維持や政策の実現段階で影響力を行使しづらくなる可能性がある。逆に,審議会のみを活用する省庁の場合,最初の接触が難しかったり,審議会委員の意見と異なる意見を提示することが難しいという問題が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作業工程は1. 予備調査,2. データ収集,3. 分析の3段階に分けられ,このうちデータ収集が約70%,分析が約50%の進捗状況にある。 予備調査や情報公開請求によって,行政自身も審議会のデータを充分に保持していないことが明らかになった。また,既存研究の調査を行い,既存研究は主に審議会か懇談会のいずれかのみを扱った研究が多いことが確認された。さらに,審議会のサブセクションのデータを収集した研究は管見の限り発見することが出来なかった。そのため,ハンドコレクトによるデータ収集に価値があると判断し,収集作業に入った。 データ収集手続きについて,当初は審議会のデータ収集を行い,続いて懇談会のデータ収集を行うという順序を想定していた。このやり方では収集が終わるまで何件のデータがあるのかわからず,作業見積もりがたてづらかったために,作業工程の見直しを行った。会合名や開催日などの会合データと,会合の委員名簿,委員の肩書きからなる名簿データの2通りに分割し,先に会合データを収集することで全体の傾向を確認した。全体の傾向からは,古い年度のデータには収集精度に問題があることが確認されたので,各会合の名簿情報を収集する範囲としては,平成20年以降の会合に限定することにした。名簿の存在・不存在を確認し,データファイルのダウンロードをするところまでは完了しており,分析可能な形態への加工が現在50%程度である。 作業としての進捗はまずまずであるが,名簿データの収集を後回しにしたため,考察すべきことは多く残っている。会合データのみで行うことのできる分析と考察は,学内の発表会で報告すると共に,ワーキングペーパーとしてまとめて公表した。日本公共政策学会とEGOS(European Group for Organization Studies)の口頭発表の申し込みを行い,両学会共採択された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の作業は,1. データ加工,2. 分析,3. 研究発表,4. データの公表の4点に分けられる。第1に,平成25年度に引き続き,名簿整形作業を進めると共に,名寄せやコードの付与を行う。この作業のため,再度学生アシスタントを雇用する。 収集したデータは5年分に限られるため,時系列の変化は充分に確認することができない。そのため,一部の委員については別途,過去の委員歴を遡って調査し,委員のキャリアパスを確認する。 第2に,名簿データの収集が終了次第,それらの名簿データを用いて,審議会と懇談会でどのように委員構成が異なっているか,民間企業の委員がどのように分布しているか等の問題を分析する。また,平成25年度の分析では,分析対象を審議会と懇談会に限定していた。収集過程では首相直轄の会合や,内閣府に設置された重要政策に関する会議等,類似の会合や,複数の省庁が合同で開催した会議など,扱いの難しいものを除外している。これらの会合について,分析の方策を検討する。 第3に,研究の発表を行う。平成26年度の上半期には日本公共政策学会とEGOS(European Group for Organization Studies)にて発表する。公共政策分野に不案内のため,積極的に情報交換を行い,本研究の目的以外に本データを活用する研究課題にどのような課題があるかを具体的に探索する。残りの分析を含め,本研究の全体は平成26年度後半に論文として投稿する。 第4に,収集データの一部分をウェブサイト上で公表し,再活用してもらえるように整備する。会合名や委員名簿など,本研究の根幹に関わる部分のデータの公表は論文採択後になるものの,各審議会の統廃合経緯や,設置根拠についてまとめたデータなど,本研究の最中に収集した情報で,汎用的なものに関しては平成26年度中に公表する。
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