当該年度の研究は、研究の目的・計画に照らして順調に成果を上げた。 既存研究は同一カテゴリに属する製品間での部品共有を対象としてきたのに対して、異なる製品カテゴリに属する製品間での部品共有を対象として、その効果を明らかにすることが本研究の目的である。具体的なリサーチ・クエスチョンは(1)既存研究が注目してきた開発効率向上効果はいかなるときも発揮されるのか、(2)これまで注目されなかった部品移転先製品の多機能化・高性能化効果があるのではないか、であった。 これらの研究とその成果の公表は計画通りに行われた。 (1)「既存研究が注目してきた開発効率向上効果はいかなるときも発揮されるのか」については、国内学術誌に査読付論文として発表された。既存研究は部品共有による開発効率向上を達成する要因として企業内調整に注目してきたが、内部調整だけでなく他社の部品共有戦略に応じて成果が異なることをこの論文では明らかにした。つまり他社の部品共有戦略によっては、企業内調整を上手く行うだけでは開発効率を他社よりも上げられないことを指摘したのである。 (2)「部品移転先製品の多機能化・高性能化効果」については、国際学会で発表した上で、ワーキング・ペーパーを作成し国際学術誌に投稿した。この発表と論文は、既存研究が注目してきた通り部品共有は開発効率を向上させるだけでなく、他カテゴリ製品からの技術の移転によって部品移転先製品が多機能・高性能になることを明らかにした。
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