研究実績の概要 |
今年度は、日本の公開企業約3400社を対象に、アーカイバル・データを用いてコーポレート・ガバナンスの質と内部統制の質との関係を実証的に明らかにした。ここで導出した実証仮説は、「我が国の企業のコーポレート・ガバナンスの質は内部統制の質および内部統制の質の改善に影響しない」というものである。この主張の論拠は、我が国のコーポレート・ガバナンスに係る法制度が例えば米国との比較で厳格さに欠けるということ、また社長が取締役会議長を兼任する等の事例に見られるように社長権限が強大であるということである。このような現状が改善されない限り、ガバナンスの質の向上は本質的な意義を有することがなく、したがって内部統制の質に影響しないといのが本研究の主張である。検証結果は、ガバナンスの質は内部統制の質の改善と有意に負の相関を有する、というものであり、上記の主張を支持するものである。この研究結果は、現在のガバナンスに係る法制度の議論に対して重要な示唆を含んでいる。すなわち、社外取締役の設置を義務付けたとしても、例えば社長の権限の範囲を限定しない限り、その効果が意図したものになるかは疑わしい。 上記結果を含む最終成果物は、平成26年8月に開催されたアメリカ会計学会で発表した(American Accounting Association 2014 Annual Meeting in Atlanta, GA)。またこの学会発表で頂戴した意見を元に、さらに加筆・修正・校正したものを3月上旬に国際ジャーナルへ投稿した。具体的な投稿先は、Journal of Business Researchである。尚、平成26年3月31日現在ジャーナル側のレスポンスは届いていない(現在レビュー・プロセス)。
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