本研究では、学校選択問題に代表されるマッチング理論のモデルをアファーマティブアクション等の政策を包含できるようなモデルへの拡張を行い、その政策効果について分析した。特に、学校のランキングが「無差別性」と「学生の特徴に応じたターゲット分布(政策目標)」を同時に有するモデルを考案、分析した。 本研究の結果として、(1)安定マッチングの存在を明らかにし、(2)複数ある安定マッチングの中で、最も効率的なマッチングを探し出す方法を考案し、(3)その条件付き安定マッチングが効率的であるための必要十分条件を明らかにした。(4)さらに、具体的なターゲット分布に対して、学校のランキングを明示的に構築する方法を明らかにした。特に、ターゲット分布に対する距離関数を導入することで、距離関数が凸性を満たすように設定すると、ターゲット分布を達成しようとするのみならず、タイプ間の平等性も同時に考慮に入れられるような学校のランキングが作り出せることが明らかになった。本研究では、「無差別性」と「ターゲット分布」という既存研究にはないモデルを考案、分析したのみならず、タイプ間の平等性といった政策効果を上記の距離関数をうまく設定することで生み出せることが明らかになった。 以上の結果は、Erdil and Kumano (2015) として、現在、投稿準備中である。今後の課題としては、政策導入(ターゲット分布の導入、変更)のもたらす影響等を比較静学によって分析したい。
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