本研究は、成長地域から後進地域まで多様な個別の成長拠点の設立を支援するとともに、重層的な地域間ネットワークによって一国的な地域発展システムの構築を試みるフィンランドの地域政策の実態と政策的意義を明らかにしようとするものである。本年度の主な研究成果は以下の通りである。 第一に、近年、大きな再編を見たフィンランドの地域政策に関する資料収集活動を行うとともに、事例研究として、同国の成長拠点戦略のモデル地域とされてきた、北部フィンランドの成長拠点・オウル地域の経済動向および政策実態について重点的に現地調査を行った。結果として、ヘルスケア・ICT産業領域において、個別地域の制度変更および技術の社会実験等を促進する工夫、および、そうした成果を国内外の拠点地域と共有し相乗効果を発揮しながら、地域から発展を創出していく試みが明らかとなった。本研究調査の成果は、本年度中に学術論文として関連学会誌に投稿を予定している。 第二に、2000年代初頭以降、成長拠点の振興策を後進地域の中小都市にまで拡大する動きが見られたが、近年の同国の政治的動向および経済停滞を受けて、一国的な地域政策の体系から後退し、EUの地域政策および各地域の個別の振興活動に一任されている実態が明らかとなった。これらの後進地域の動向については現在も調査中であるが、北部フィンランドの事例を挙げれば、経済状況の明確な改善は見られていない。 第三に、昨年度に引き続き、日本の成長拠点戦略(クラスター政策や特区構想)および成長拠点(神奈川県・神戸市)の実態に関する現地調査を行った。本研究の成果については、2015年度中に発表予定の学術論文および図書の一部に反映される予定である。
|